「年棒制に潜むリスク」

2011年02月27日

最近、大手企業で年俸制を導入している企業が増えているせいか、中小企業でも年俸制の導入のご相談が増えてきています。

理由は様々でしょうが、人件費の抑制ができると誤解されている経営者の方も多くいます。

こんなご相談がありました。
「年俸制にすれば、残業代は払わなくていいでしょ?」

単に、年俸制を導入したからといて管理監督者等を除き残業代を払わなくて良くなるわけではありません。
 
どうしても、年俸制を採用されたいのであれば一定の残業時間を含めた年俸にすることをお勧めします。
例えば、賃金規程・労働契約書等で「年俸○○○万円には、時間外労働(年間240時間)を含めたものとする。」と規定します。
加えて、給与明細上は所定労働時間分と割増賃金相当分を明確に区分されている必要があります。
年棒を12分割して払う場合は、各月の実際の残業時間が20時間(年240時間÷12か月)を超えた月は、超えた分も当然支払わなければなりません。
又休日出勤があれば同様に支払いが生じますのでご留意ください。
 
また、支払いを12分割ではなく、16分割しているケース(賞与として各2か月分)は別の問題が生じます。
具体的には、年間の所定労働日数260日×1日8時間=年間所定労働時間2080時間で年俸800万円を 毎月50万円(50万円×12=600万円) 残りを賞与として夏と冬に100万円ずつ(100万円×2回)を支払っているケースです。

この時の残業代の単価計算のベースは、800万円になります。

なぜなら、「賞与」に支払われた部分は予め金額が確定しているので、「賞与」ではなく「給与」になるからです。(賞与とは、原則金額が事前に確定していないものをいいます。

その場合は、残業代の単価計算に含めなくてもよいことになります。)
残業代の時給単価は以下のような計算になります。

800万円÷2080時間×1.25(時間外割増)=4808円

仮に、給与として支払った600万円のみを残業代の単価ベースで計算した場合は
600万円÷2080時間×1.25(時間外割増)=3606円
になります。もし600万円で計算し残業代を支払っていたとすると、1時間1202円分が未払いの残業代が生じてしまいます。
 
ここで良くお考え下さい!

「年俸制」ではなく「月給制」で月50万円+賞与とし、結果800万円の年収を支払っていれば、残業代の時給単価は3606円です。
仮に、年間240時間の残業時間とすると年間約29万円の残業代の支払いが少なくて済むのです。
 
人件費抑制が目的であるならば、あえて「年俸制」にすることは逆効果になることになります。
 
成果主義給与体系の導入とともに年棒制を導入し、成果に基づき報酬が変動するなど社員のモチベーションアップを期待する、あるいは残業代の支払いを必要としない管理監督者に限って適用し、年俸制になることが社員のモチベーションにつながることを期待などの理由で制度導入されるのであれば良い制度かもしれませんが、安易に年俸制を導入することは禁物です。

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